千葉県地学教育研究会

地学関係の野外巡検
当研究会では、現地講習会として地学関係の野外巡検を実施してきました。以前は嶺岡地域の岩石や館山の化石サンゴ、東北地方太平洋沖地震による津波の痕跡など様々な地域の巡検を実施していましたが、近年は以下に紹介する「いすみ市国吉の露頭観察」、「千葉市美浜区の昔の海岸線を歩く」等をテーマとした巡検を実施しました。2019年以降は新型コロナの流行により実施できない年が続きましたが、2024年は再度、「千葉の昔の海岸線を歩く」をテーマとした巡検を実施する予定です。
●これまでに実施した野外巡検
【教科書に載っていた露頭を観察しよう】 (いすみ市国吉)
いすみ市文化とスポーツの森(夷隅文化会館)周辺には上総層群大田代層の砂岩泥岩互層が道路に沿って露出しており、小中学校で用いられている理科教科書にも地層の例としてしばしば掲載されています。
現地研修会では、まず最も近い露頭で地層の連続性について実例を示して説明がありました。次に下の道路から文化会館までの道路沿いに見られる大きな露頭に移動し、砂泥互層や火山灰の堆積についての説明や断層の観察などを行いました。部分的に貝の化石を含む層もあり、転石から化石の採集もできます。さらに下方に移動しながらO16という火山灰鍵層やS字カーブを挟んで断層がつながっている様子の確認など、狭い範囲ながら地層についてのさまざまな特徴を学ぶことができました。
【千葉の昔の海岸線を歩く】 (千葉市美浜区)
千葉市美浜区の海岸は、高度経済成長の影響で昭和30年代半ばに埋め立てが始まり、昭和50年代には元の海岸線から2km以上の海が埋め立てられました。
野外巡検ではまずJR幕張駅から東に歩き、花見川にかかる橋から川の流路の人工改変を物語る地形を観察しました。次に、幕張駅近くの昆陽神社の周辺で昔の花見川低地の湾口にできた砂州の一部として現在は墓地になっている場所を訪れました。
電車で京成幕張から京成稲毛まで移動。稲毛浅間神社脇の稲毛公園は台地上に形成された昔の砂丘です。ここでは樹木が風の影響を受けて陸側に傾いている“風衝樹形”が観察できます。また、根元付近の砂が飛ばされてできた“根上がり松”が見られます。国道14号線の稲毛陸橋周辺には、昔は海食崖であった崖が続いています。1960年代まではこの崖の下はすぐ海になっていました。浅間神社の一の鳥居から海側に歩くと、昔の海岸線にあった納涼台(海の家)の痕跡が屋根の形や店の屋号に残っているのがわかります。現在は多くの建物が立ち並ぶ街の中に残る海岸線の変遷の痕跡をたどりながら、数十年の時の流れと自然の地形に人間が加えた影響の大きさを感じることのできる巡検でした。

砂泥互層の露頭

稲毛陸橋と海食崖の跡

地層に見られる断層
